本年(2026)年10月1日、事業者がカスタマーハラスメント対策として講ずべき措置などを定める改正労働施策総合推進法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)が施行されます。そのような今、カスタマーハラスメント(カスハラ)に関する記事などをよく目にします。
そこで、カスハラに関連する話題を。
私は、長年、民事介入暴力対策委員会(民暴対策委員会)のメンバーとして、カスハラ対策や不当要求(いわゆる悪質クレーマー)対策に取り組んできました。
「なぜ、民暴対策弁護士がカスハラやクレーマー? 暴力団じゃないのに。」
と思われる方もいらっしゃると思います。しかし、カスハラやクレーマーへの対策は民暴対策弁護士の主要な活動領域の一つです。
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そもそも、反社会的勢力の主要なものとして暴力団構成員が位置付けられるのは確かです。ただ、日本政府の犯罪対策閣僚会議は、2007年、反社会的勢力について、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。」と説明し、あらゆる企業に対し反社会的勢力との一切の関係遮断を強く求めました(同年6月19日「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」)。ここで重要なのは、行為者に暴力団員等の属性の有無があるか否かにかかわらず、暴力的要求行為や法的な責任を超えた不当要求を行った者こそが反社会的勢力であると説明されていることです。暴力団員等でない一般市民であっても反社会的勢力となりえるのです。
この政府の方針と同じ立場で、私たち全国の民暴対策弁護士は、不当要求行為(悪質クレーマー)に対する対策を研究・実践してまいりました。民暴対策委員会では、企業に対する不当要求行為については「企業対象暴力」,地方自治体等の行政に対する不当要求行為については「行政対象暴力」、教育現場に対する不当要求行為については「教育対象暴力」として整理してきました。
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日弁連が年二回全国で開催している民暴対策大会では、これまで、「企業対象暴力の現状とその対策」(1995年)、「企業対象暴力対策について」(1996年)、「身近な経済活動からの暴力排除の法理」(1996年)、「企業健全化を目指して-民事介入暴力排除の観点から-」(1998年)、「地方公共団体・公務員に対する民暴」(2001年)、「企業健全化を目指して-民事介入暴力排除の観点から-」(2003年)、「ふりかかる火の粉に負けない!「行政対象暴力の排除」」(2004年)、「シャットアウト 行政対象暴力」(2006年)、「企業対象暴力~21世紀の企業防衛のあり方」(2007年)、「行政対象暴力の現状と対策-暴排システム構築と弁護士の関与-」(2008年)、「反社会的勢力による,不当要求行為の実態と対策~仮処分を中心として」(2010年)、「行政対象暴力・不当要求対策の到達点と今後の課題」(2011年)、「暴力団対策法の現状と問題点~不当要求に対する暴力団対策法の効果的利用~」(2012年)、「不当要求対策の実践と立法提言」(2020年)、「行政に対するカスタマーハラスメントとその対策」(2025年)、「教育現場におけるトラブル解決システム」2025年)をテーマとして取り上げ、我々民暴対策弁護士は、数多くの機会で研鑽してまいりました。
また、本年8月の神奈川県弁護士会民暴対策委員会の夏期研究会では、「カスタマーハラスメント対策」と「学校をめぐる法律問題」をテーマに、最新の方策を研究・検討しました。
なお、本年7月、遅ればせながら、神奈川県弁護士会の民事介入暴力被害者救済センターにおいてカスハラや一般市民による不当要求事案を扱えるように同センターの業務実施規則が改正されました。
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「不当要求」は、「法的な根拠や社会的妥当性を欠く要求行為」と整理されています。また、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」は、不当要求の問題を職場の労働者の保護施策の視点で捉え直したもので、改正労働施策総合推進法33条では、「①職場において行われる、顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、②その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③当該労働者の就業環境を害すること」とされます。
ここで重要なのは、要求内容がいくら正当なものであっても、要求する態様が社会通念上許容される範囲を超えていれば、不当要求(悪質クレーム)でありカスハラだということです。土下座の強要などは当然これにあたりますが、それに限らず、暴言・怒声や脅迫・暴行を伴う要求、通常業務に支障をきたすような長時間または繰り返しの要求などは、これに当たり得ます。不当要求やカスハラに対しては毅然とした対応が必要です。
ただ、地方自治体等の行政や学校などの教育現場においては、国民・市民の行政サービスを受けることのできる当然の権利や子どもの教育を受ける権利等に対する特別な配慮が必要です。場合によっては、子どもの権利委員会に所属する弁護士の知見を頼りにすることもあるでしょう(幸い、当事務所には、子どもの権利委員会で活躍する弁護士が複数所属しています)。また、カスハラ対策においては、雇用企業が労働者に対して負う安全配慮義務の履行についても十分な配慮が必要です。
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私は、中小企業や地方自治体の法律顧問を多く務めさせていただいております。しっかりと不当要求対策やカスハラ対策に尽力してまいります。また、当事務所の原田聖哉弁護士は、地方自治体のカスタマーハラスメント対応担当弁護士を務めています。同弁護士の奮闘をねぎらうとともに、事務所みんなで応援しています。